キャリアコンサルティングの中には、「職業興味」という概念がありますが、そもそも人の興味や関心がいつ、どのようにして芽生えるのかについて、よく考えます。
知り合いのWebマーケティングコンサルタントのTさんは、幼い頃からお店やコンビニの陳列棚を見るのが好きで、よく観察していたそうです。お店の入口にどういうものが置いてあるか、季節ごとに変わる配置を見て、自分なりに理由を考え、納得していたといいます。
また、私が一時期、通っていた哲学塾の先生は、5歳の頃から死について考えていたそうです。「なぜ自分は死ななければならないのか」という問いが、幼いながらに納得できず、ずっとそれを考えてきたと言われていました。
その他にも、「お金はどうやって自分の手元にくるのか」「なぜ戦争があるのか」といった疑問を、子供の頃から抱いていたという人もいます。
私自身はどうだったかというと、「なぜ毎日、気分が同じではないのだろう、毎日同じなら楽なのに!」と思っていました。朝起きて、昨日の夜とは気分が違うことを憂鬱に思いながらも、そんなことを考えている子供はいないだろう、とも思っていたのでその問いを誰に話すこともなく過ごしていました。
こうして振り返ってみると、子供の頃に何かに対して興味や関心を抱いたとき、その見方には悲観的、楽観的、中立的といった違いがあるように思いますが、それらの関心は、どんな回り道をしたとしても、職業興味や職業選択につながっていくのではないかと感じています。
私もそうですが、親から暴力を受けたり、安定性を欠いた家庭環境で育った人たちは、悲観的な視点から興味を抱くことがあるかもしれません。それでも、その関心は、やがて仕事や現実的な生き方に結びついていくのだと思います。
そうした「職業興味」を、どのように育てていけるのか。それは、必ずしも明るい環境や前向きな動機から生まれるものだけではなく、むしろ、違和感や疑問、孤独や痛みの中で芽生えた関心こそが、深く根を張り、人生の選択に影響を与えることもあるのです。
私たちは、子供時代に感じた「なぜ?」を、いつしか忘れてしまうことがありますが、その問いは、形を変えて今も自分の中に息づいていて、無意識的に仕事や人との関わり方に影響を与えているのかもしれません。
生き方やキャリアを考えるときには、幼いころの「興味関心の種」に目を向けてみると、意外なところで自分らしさを発見できるかもしれません。