アルクアラウンド 千代田区

長いあいだ会社員として働いていて、その間、私はほとんど歩いていませんでした。 歩くという発想そのものがなかったし、そもそも気持ちに余裕がなかったのです。

どこへ行くにも最寄り駅を調べ、できるだけ歩かずに済むルートを探す。いかに歩かずにたどり着けるか、に全力を尽くしていたと言ってもいいかもしれません。

ところが、会社という場所を離れた途端、急に、歩くか、という気持ちが湧いてきました。誘ってくれる人たちがいたのも大きいと思いますが、あれほど避けていた歩行が、急に身近なものに感じられるのだから不思議です。
今年2月、恵比寿ガーデンプレイスから新宿御苑まで歩いたのをきっかけに、春からはほぼ毎日、1~2時間は歩く生活になりました。

歩いていて、まず、私の中で時間の流れが変わったことに気づきます。毎日がいつも以上にゆったりと進んでいく。歩いている間はやることが歩くことしかないので、脳に余計な負荷がかからないのでしょう。
体幹はしっかりしてきたように感じますが、足は一向に細くなる気配がありません。

そして最近、私はひとつの仮説を立てています。
私が歩くと、クライエントさんの脳も静かになるのではないか、と考えているのです。

歩くこととうつの関係は、医学的にもはっきりしてきています。
大規模メタ分析では、1日5,000歩以上の歩行で抑うつ症状が少なくなり、7,000歩以上ではうつ病リスクが約3割下がると示されています。
歩行によって私自身の脳が最上級のリラックスモードに入り、その状態がミラーニューロン(相手の状態を無意識に映し取る脳の仕組み)を通して、クライエントさんにも伝わっているのではないか、そんな気がしているのです。

実際、この数か月、特にうつを経験したクライエントさんたちの変化が大きい。
「安心ってこういうことかとわかるようになった」
「目の前のことが片付いてしまって、脳が退屈な感じ」
そんな声が続いています。

その他、いろいろなことが変化しているのですが、これはもしや、共同調整(コ・レギュレーション)が起きているのではないだろうか、と思ったのです。

もちろん私は私のために歩いています。
しかし、カウンセラーが歩くことでクライエントさんの脳の状態が安定するのなら、歩かない理由はどこにもありません。

先日の夜、千代田区内のある交差点で信号待ちをしていたときのこと。
「おねえさん、黒装束すてきね」と声をかけられ、振り返ると小柄なおばあさんが立っていました。
「私、100歳なのよ」と言われて、思わず本気で驚いてしまいました。
都知事から表彰されたそうで、100歳まで生きるコツ(女性版)を教えてくれました。なんと!

別れ際、「がんばってね」と言われたのですが、100年生きた人からの「がんばってね」は、説得力が桁違いでした。

そんなことを経験しながら、歩いています。

メンタルサポートオフィスLink | 心理カウンセラー 加藤慶美

[所属] 日本臨床死生学会,日本トランスパーソナル学会 [資格・免許] 国家資格キャリアコンサルタント,一般社団法人産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー,両立支援コーディネーター,中学校教諭一種免許状(音楽),高等学校教諭一種免許状(音楽)

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